前回の記事ではスタンダードな誰もがイメージする「ペリドット」を紹介しましたが、今回はペリドットの中では稀少性が高く目にする機会も少ない特殊なタイプのペリドットなんかを紹介していきたいと思います。
隕石に含まれる天然オリビンのような宝石というよりも鉱物標本的な要素の高いペリドットを除き、宝石としてのペリドットとしてはキャッツアイ効果を示す「ペリドットキャッツアイ」と独特の煌びやかなスパンコールのようなインクルージョンを内包した「サンスパングル・インクルージョン・イン・ペリドット」の2種類が稀少性が高く特別な扱いをされるペリドットとなっているんですよ。
キャッツアイ効果を示すペリドットキャッツアイは、ペリドットの中では特に稀少性が高く、ペリドット特有の薄緑~黄緑系の色合いをした宝石でキャッツアイ効果を示すもの自体が珍しい事もあり、とても珍しい宝石となっています。
それに対して、スパンコールのような煌くインクルージョンを内包したペリドットは、西洋では煌びやかで華やかな印象から「スパンコール」を意味する「サンスパングル」と称されるインクルージョンとなり、東洋では丸い蓮の葉をイメージする事から「ウォーター・リリー・リーフ」とか「ウォーター・リリー・パット」といった称され方をしますが、東洋では植物としての「蓮」は宗教的な意味合いもあり特別な扱いをされる為、とても稀少な上に珍重されるんですね。
ま、折角、スタンダードなタイプではないペリドットについての記事なので他にも少し特徴的なインクルージョンの内包したペリドットなんかについても紹介しますね。
ちゅ~ような感じで、スタンダードじゃないペリドットについての記事を書きたいと思います。
特殊なペリドットの鉱物的な情報や数値データについて
基本的に鉱物としてはスタンダードなペリドット同様に天然オリビンとなり、主にインクルージョン及びインクルージョンに起因する光彩効果に特徴が生じる事から、鉱物的な情報や数値データについては、スタンダードなペリドットと殆ど変わりません。
ペリドットキャッツアイもサンスパングル・インクルージョン・イン・ペリドット(ウォーター・リリー・リーフ・インクルージョン・イン・ペリドット)も基本的に愛好家さんや蒐集家さんといったコレクター向けになる上、稀少性の高い流通性の低い宝石となっている事から知名度の高いペリドットとしては少しばかり特殊な扱いの宝石になっていますよ。
スタンダードなペリドットと殆ど同じですが、一応、情報と数値データを記載しておきます。
【 スタンダード系じゃないペリドットの情報や数値 】
- 鉱物名:天然オリビン
- 宝石名:ペリドットキャッツアイ
- 宝石名:ペリドット(俗称:サンスパングル・インクルージョン・イン・ペリド
ット、ウォーター・リリー・リーフ・インクルージョン・イン・ペリド
ット、ウォーター・リリー・パット・インクルージョン・イン・ペリド
ット) - 和名:橄欖石
- 結晶系:斜方晶系
- 産出形状:塊状、扁平結晶
- カラー:黄緑色、帯緑黄色、薄緑色、帯褐緑色
- 透明度:透明、キャッツアイは半透明
- 光沢:ガラス光沢(油膜状光沢)
- モース硬度:6.5~7程度
- 劈開:弱または不完全
- 断口:貝殻状
- 比重:3.22~3.45程度(含有する鉄分により変動)
- 偏光性:複屈折性
- 屈折率:1.650~1.690程度
- 多色性:見かけの二色性(明)
- 蛍光性:認めず
- 分光性:アイアンバンドを認む
- インクルージョン:クロマイト、ウォーターリリーリーフ、液体、液膜、微小、
結晶等 - 産地:アメリカ、中国、パキスタン、ノルウェー、ミャンマー等
- 代表的なカット:キャッツアイタイプはカボッションカット
サンスパングル・インクルージョン系は特になし
どちらにしても印象的なので一目で分かると思います。
ペリドットキャッツアイのルース
ペリドット(鉱物名:天然オリビン)の中でも産出形状としては主に大粒サイズの結晶となる塊状か稀にしか産出しない扁平結晶といったタイプの原石からキャッツアイ効果が見えるようにカボッションカットにカット研磨されます。
他のキャッツアイ効果を示す宝石に比べて、ペリドットの場合は色合い的に淡く薄い事からキャッツアイ効果そのものは弱めになる事から、それを補う為、かなり大粒サイズのルースで裏面も丸みを持たせたカボッション状にカット研磨を施したダブルカボッションカットのような一般的なカットスタイルとは少し違ったアレンジされた特殊なカット研磨が施される事が多くなります。
こちらは別格というか市場に流通する機会も殆どないビルマ産の「26.262ct」という2㎝を超える大きなペリドットキャッツアイのルースとなり、現在であれば販売し易いように5ctくらいのサイズに分割されて何個かのルースとして販売されると思いますが、こうして本来の原石が持つ大きさ自体が稀少価値の高さとなるので、あたし的には小粒サイズのものよりも大粒サイズのルースが好きなんですね。
この時の海外買い付けでもっとも高額なルースでしたが、この先、これ程のルースは2度と目にする機会はないと思って買い付けちゃいました。
宝石はスタンダードなタイプになると多少の類似性は生じるものの基本的に自然の生み出した特別な鉱物になるので、宝石名として同じであっても全く同じものはないのですが、こうした稀少宝石になると似た感じのものを探す事も難しいんですよ。
こちらのルースはサイズこそ先のルースに比べると小さくなりますが、それでも驚きの「11.909ct」となり、同じくビルマ産のペリドットキャッツアイになります。
ジュエリー等の装飾品にする気が皆無と思われる丸玉に近い10mmくらいのダブルカボッションとなり、特にビルマ等の産地で採取された宝石の中には明らかにジュエリー等の装飾品としてではなく、宗教的な彫刻といったものに嵌め込むような目的でカット研磨されたものがあり、あまり実用的な大きさやカット研磨ではないものの惹き付けられるような存在感があるんですよ。
ま、最近はそういう宝石は殆ど見掛けなくなりましたが、それも時代の流れですね。
サンスパングル・インクルージョン・イン・ペリドットのルース
冒頭でも書きましたが、西洋では煌びやかな印象から「スパンコール」を意味する「サンスパングル」という表現のインクルージョンで呼ばれ、東洋では蓮の葉を連想した「ウォーター・リリー・パット」や「ウォーター・リリー・リーフ」という表現のインクルージョンで呼ばれる特徴的なインクルージョンを内包したペリドットになります。
このタイプのインクルージョンは、琥珀(アンバー)でも見られる事ができますが、ペリドットのように煌びやかで華やかな印象や神秘的な印象を感じられない事から、特にペリドットに内包された場合、特別な宝石として評価されます。
産地的にアメリカ等の西洋とビルマや中国等の東洋のどちらからも稀に産出する事から、同じインクルージョンの入ったペリドットであるにも関わらず、その通称や俗称としては西洋と東洋では全く違ったネーミングになっているんですね。
ペリドットに内包するインクルージョンとしては比較的にメジャーなのですが、熱狂的な愛好家さんや蒐集家さんが多い事やカラーバリエーションの限られたペリドットの中では個性的で印象が強い事もあり、それ程、市場に流通しない系となっています。
こちらのルースは、スパンコールを意味するサンスパングルにも蓮の葉を連想するウォーター・リリー・パットやウォーター・リリー・リーフにも通じる煌びやかな輝きと華やかさと独特の神秘性を感じる中国産のルースになります。
こちらも別格サイズとなる「45.142ct」というファセットカットされたルースとしては信じられない程に巨大なルースで3㎝近い大きさとなっています。
先程の巨大なペリドットキャッツアイのルース同様、現在であれば販売し易いように5ctくらいのサイズに分割されて何個かのルースとして販売されるでしょうから、本当に貴重なルースですね。
こちらはアメリカ産で典型的なスパンコール型のサンスパングル・インクルージョン・イン・ペリドットの内包したルースですが、さすがに先程のルースまでの大きさではないので少し落ち着いた印象に見えますね。
サイズ的には約12mm×10mmでキャラ目としては約5.4ct弱くらいとペリドットとしては大き目となっています。
こうした特徴的なインクルージョンを内包したルースの場合、カット研磨によって印象が全く違ってしまうので、カッター(石のカット研磨をする職人さんの事)のセンスと腕の見せ所なんです。
その他のインクルージョン系ペリドットのルースやジュエリー
キャッツアイやサンスパングル程の稀少性はないものの他の宝石に比べると多様性に乏しいペリドットは、基本的に薄緑~黄緑系の色相に限られている事もあり、ちょっと違った雰囲気を求めるならインクルージョン系のタイプになると思います。
ちゅ~ても見た目の印象がインクルージョンのないスタンダードなペリドットの方が美しく完璧に見える場合が多く、そうした中で何気に鉱物的な面白さを感じられるのが管状包有物や針状包有物を内包したペリドットなんですね。
スタンダードなタイプでない分、好みが分かれるところだと思いますが、インクルージョンの生み出す偶然性や自然美は宝石の種類に関わらず、何とも言えない独特の魅力を楽しめるので、キャッツアイやサンスパングルのように別格の扱いにはならないものの個性的でお薦めです。
こちらはペリドットのインクルージョンとして内包されている管状・針状包有物としている事が多い鉱物名:ルドウィッヒ(和名:ルドウィック石)がびっしりと内包しています。
管状・針状包有物や管状・針状包有物がびっしりと内包されている鉱物は自然にレインボー効果が見られる事が多くなり、インクルージョンの入り方や量や全体としてのルースの雰囲気なんかを選ぶ楽しみがありますよね。
ちょっとペリドットには見えない感じがしちゃうものは珍しいのですが、カット研磨も良くて気に入っていたルースです。
こちらは華やかさを感じるスタンダードなペリドットに黒色の針状包有物が見られる鉱物的な面白さを楽しめるルースです。
こうした自然美を感じられるルースはスタンダードな宝石としては扱われ難い反面、特徴が明確で個性的なので少し人とは違った感じのものを好まれる方に人気があるんですね。
カット研磨やサイズといった点ではスタンダードなペリドットな感じだけにコントラストの効いた黒色をした針状包有物の妙味があります。
前回の記事で紹介したスタンダードなペリドットを使ったジュエリーとは違って、構造美なんかを意識したジュエリーを製作したりしちゃうんですね。
インクルージョンが入っている事が前提というか、その雰囲気を好んで狙っているので使用するルースのポイントはカット研磨の美しさとカット研磨のスタイルです。
もちろん色合いや大きさ等とのバランスもありますが、こうした個性的な印象のジュエリーを製作するのはとても楽しいんですよね。
ちゅ~ような感じで、スタンダードじゃないペリドット、ちょっと変わった珍しい感じのペリドットなんかを紹介してみました。
いろいろなバリエーションが紹介できると記事を書いてても楽しいですね。
ち~ゆ~。
ΦωΦ
大好きなペリドットキャッツアイ。
ΘεΘ
ちょ~可愛い。
ΦωΦ
サンスパングルも綺麗だねぇ。
ΘεΘ