今回は稀少宝石の中でも屈指の光学特性から強い煌きと多色性が人気の「スフェーン(チタナイト):Sphene」に関する記事を書きたいと思います。
あたしが「スフェーン」のルースを最初に手に取った頃は、宝石というよりも完全にコレクター向けのルースという扱いで現在のように知名度の高い人気のあるものではなかったんですよ。
鉱物標本としては特徴的な楔形結晶をしている事から筋金入りの硬派な鉱物マニアの方々の間では人気があったもののカット研磨されたルースの場合、その特徴的な結晶形が分からなくなる為、それこそマニアックな稀少宝石として扱われていました。
その当時、カット研磨されたルースは基本的にジュエリー等に加工する為のもので、宝石の愛好家さんや蒐集家さんはターゲットになっていなく、かと言って、鉱物の愛好家さんや蒐集家さんも鉱物標本には興味があってもルースには興味のない人が多く、特に国内ではカット研磨されたルースの愛好家さんや蒐集家さんはマイノリティーの極み的なポジションで理解され難い存在だったんです。
まぁ、海外では稀少宝石のカット研磨されたルースの愛好家さんや蒐集家さんは国内の愛好家さんや蒐集家さんとは比較にならない程に多かった上、その多くの方が基本的に品質やサイズやカット研磨の良さに拘っていたので、現在では入手困難なタイプや大きさのルースがポロンっと出てきたりして面白い時代でした。
スフェーンの場合、その美しさは宝石として扱われても申し分のない魅力的なものなのですが、モース硬度が低めな事や劈開の関係でカット研磨されたルースにしてもジュエリーとして用いられる事が少なかった為、逆に観賞用のコレクションルースとしては特に大粒サイズのものしか価値がなかったんですよ。
ちゅ~ような感じで、現在は宝石としても扱われ、とても人気が高くなった「スフェーン」についての紹介をしていきますね。
スフェーン(チタナイト)って鉱物ってのは何なん?
「スフェーン」は別名で「チタナイト」と呼ばれるようにチタンを含有した鉱物となり、強い多色性とダイヤモンドを凌ぐ高い分散度を持っている事から透明度の高い高品質なルースは非常に美しく存在感がありますよ。
当然ながら透明度の高い宝石質の原石や結晶は少ないので、そうした高品質のタイプは宝石というよりも傾向的に稀少宝石の扱いとなっています。
同じく高い分散度を持った主な宝石については以前に書いた「デマントイド・ガーネット」の記事でも触れましたが、改めて記載しておきます。
自然界に存在する分散度の高い主要宝石
- アナテース:0.213~0.259程度(屈折率:2.488~2.497程度)
- スファレライト:0.156程度(屈折率:2.37~2.47程度)
- キャシテライト(透明な宝石質):0.071程度(屈折率:2.097~2.101程度)
- デマントイド・ガーネット:0.057程度(屈折率:1.86~1.89程度)
- スフェーン:0.051程度(屈折率:1.87~2.21程度)
- アングレサイト(透明な宝石品質):0.044程度(屈折率:1.87~1.89程度)
- ダイヤモンド:0.044程度(屈折率:2.41程度)
- ベニトアイト:0.044程度(屈折率:1.757~1.804程度)
- ジルコン:0.039程度(屈折率:1.780~1.925程度)
「スフェーン」を知っていて興味のある方なら「スファレライト」も馴染みのある稀少宝石だと思いますが、宝石としては別格となり、本当に素晴らしいルースは事実上は入手できないに等しい「デマントイド・ガーネット」は除外されるので宝石や稀少宝石として市場に流通しているダイヤモンドを凌ぐ分散度を持っている代表的なものとなると「スフェーン」と「スファレライト」に限れている状態ですね。
「スファレライト」に関しては改めて紹介しますので、今回は省略しますが、そんな個性的で特徴的な「スフェーン」の魅力や歴史を今回は書いていきます。
【 スフェーンの情報や数値 】
- 鉱物名:天然スフェーン
- 宝石名:スフェーン
- 別名:チタナイト
- 結晶系:単斜晶系
- 産出形状:楔形結晶、扁平結晶、柱状結晶・塊状等
- カラー:黄色、緑色、灰色、褐色、青色、赤色、黒色等
- 補足:強い多色性の為、見る角度によって色合いが変わります。
- 透明度:透明~半透明
- 光沢:ダイヤモンド光沢または樹脂光沢
- モース硬度:5~5.5程度
- 劈開:1方向に明瞭
- 断口:不平坦性
- 比重:3.45~3.55程度
- 偏光性:複屈折性、二軸性
- 屈折率:1.87~2.21程度
- 多色性:強い三色性
- 分光性:ディディミウムライン
- 拡大検査:ダブリング(二重像現象)
- 産地:マダガスカル、パキスタン、オーストラリア、インド、スイス、ブラジ
ル、アメリカ、タンザニア、アフガニスタン等 - 代表的なカット:主にファセットカット
これだけの基本的な情報でもポイントが盛り沢山あるのが、スフェーンの魅力となり、ちょっとだけ抜粋すると下記のようになりますよ。
【 スフェーンの特徴的な個性や魅力 】
- 正式な宝石名は「スフェーン」となりますが、主に鉱物タイプとしては「チタナイト」と呼ばれる事が多く、宝石としても鉱物としても人気の高さが感じられます。
- カラーは基本的に強い三色性を持つ為、見る角度や光の当たり方によって複数の色合いが見られる事から、暖色系の色合いと寒色系の色合いが混在して見えます。
- 分光性の黄色系のカラー領域に見られる「ディディミウムライン」と拡大検査のカット研磨されたファセット面のエッジが二重に見える「ダブリング」も特徴です。
スフェーンのカット研磨されたルースの歴史
冒頭に書いたように「スフェーン」は鉱物標本といった愛好家さんや蒐集家さんの方が多かった上、カット研磨されたルースは現在よりもニッチでマニアックなタイプの観賞用のコレクションとされてきた為、スフェーンの歴史を知るにはカット研磨されたルースの変化を見るのが分かり易いと思います。
【 初期スフェーンのカット研磨されたルース 】
初期の頃は、スフェーンはモース硬度が低く脆い石である為、カット研磨そのものが比較的に大きなファセット面で構成されたものが多く、高い分散度による煌びやかな輝きよりも多色性や鉱物標本としてのチタナイトの印象を残すようなタイプが中心でした。
こちらは鉱物的な楔石の印象を強調したルースとなり、現在のスフェーンのルースとは大きく印象が違って見えますね。
こちらのルースはスフェーンの持つ多色性を重視した比較的にファセット面の少ないカットコーナーレクタンギュラーステップカットというカット研磨が施されているタイプとなり、このタイプのカットスタイルは主に色合いを重視したものになり、煌びやかな輝きは感じないものの現在、市場で見掛けるスフェーンとは違った独特の趣きと個性があります。
【 現在のスフェーンのカット研磨されたルース 】
初期のカット研磨されたスフェーンのルースと違って、細かくて多くのファセット面を持ったクッションミックスカットのようなカット研磨が施されているものが多く、多色性だけでなく煌びやかな輝きも感じられるようなスタイルとなっていますね。
スフェーンの特徴的な個性や魅力のところで触れましたが、黄褐色系の色合いをしたタイプは「ディディミウムライン」と「ダブリング」の効果が視覚認識し易いのですが、見た目の色合い的に単色系の美しさを感じ易い緑色系の色合いのタイプやバイカラーのような異なる地色が混在したようなタイプの産地が登場しましたよ。
カット研磨のスタイルが歩留まりの悪い細かい多面体のファセットカットのものが主流になった事も理由となりますが、現在は国内でもカット研磨された観賞用のコレクションルースの需要も増えた為、ともかく小さなルースが多くなり、あたしが好きな大粒サイズは見る機会が少なくなってきちゃいました。
これも時代の流れっちゃ~流れっすので、それはそれですが、あたし的には大きなルースが好きなんですよね・・・
スフェーンを使ったジュエリー
モース硬度が低めでデリケートなスフェーンは以前まではジュエリー等に加工される事が少なかった稀少宝石のひとつでしたが、現在はジュエリーに使われる機会も多くなりました。
そうは言ってもデリケートな宝石なので取り扱いには注意が必要ですが、他の宝石では味わえない独特の美しさがありますよ。
現在のスフェーンのルースで主流となっている細かな多数のファセット面を持ち、尚且つ特徴的な強い多色性やダブリング等が明瞭な大粒サイズのルースとなると必然的にハイジュエリーに向いた稀少性と価格になる為、ルースが素晴らしい程、宝飾系のジュエリーに加工されます。
ちゅ~ような感じで、スフェーンという宝石の魅力は強い多色性と煌びやかな輝きといった特徴で一般的に浸透し、現在では好きな宝石って何?って質問された時にスフェーンと答える人もいるんじゃないかと思うくらいに人気のある石になりました。
確かに大粒サイズのルースとなると稀少となりましたが、その反面で小粒サイズのスフェーンを見掛ける機会は増えてきたので、稀少宝石という扱いの傾向が強かったのが遠い過去のように感じられます。
時代の移り変わりって不思議な感じがしますが、こうやってブログを書いているといろいろ想い出して面白いですね。
ちゅ~ような感じで、ち~ゆ~。
ΦωΦ
ブレイクした石のひとつじゃない?
ΘεΘ
絶対的な個性があるからね。
ΦωΦ
綺麗だもん。
ΘεΘ