今回も前回に引き続き、人類が造り出してきた人造宝石のひとつ「ストロンチウムチタナイト」についての記事を書きたいと思いますよん。
「ストロンチウムチタナイト:Strontium Titanate」は、日本語では「チタン酸ストロンチウム」と呼ばれる「チタン(元素記号:Ti)」と「ストロンチウム(元素記号:Sr)」の複合酸化物になりますね。
前回の記事で紹介した「YAG」は主にレーザー等の光学分野での活用されますが、今回の「ストロンチウムチタナイト」は主に半導体や触媒等の工業分野で活用される為、共に産業分野での開発を進める過程で主にイミテーションダイヤモンドとなる人造宝石としても用いられる事があったんですよ。
時代的には「ストロンチウムチタナイト(1955年頃)」の方が先行となり、その後「YAG(1960年頃)」へと徐々に移り変わっていきました。
「YAG」の場合は光学分野での利用目的という事もあり、ダイヤモンドのようなカラーレスのタイプ以外に着色成分によって様々なカラーバリエーションが誕生しましたが、「ストロンチウムチタナイト」の場合、人造宝石としての最大の特徴がダイヤモンドを上回る分光率や高い屈折率といった主に煌きや輝きといった特徴であった為、カラーバリエーションとしてよりもカット研磨といった部分に個性が見い出されたんだよ。
ちゅ~ような感じで、現在の代表的な人造宝石となる「キュービックジルコニア」の登場と普及と共に徐々に姿を消していった人造宝石のひとつですが、ダイヤモンドを上回る煌き(ブリリアンシー)と分光率(ファイヤー)を持つ事から、ある意味では人造宝石でしか生み出せない個性的な特徴が好まれ、人造宝石としては何気に知られた存在となっているんですよ。
ダイヤモンドのような透明無色のカラーレスからイエロー系やブラウン系といったカラーバリエーションとしては偏った感じになっているもののイミテーションダイヤモンドという扱いであった事を考えるとダイヤモンドと同様の色合いに偏っている事も納得ができますね。
こちらはロシア産のシャンパンゴールドカラーをした華やか・・・というか、ちょっと派手なくらいの印象を持ったストロンチウムチタナイトのルースです。
★その他いろいろな人造宝石
ストロンチウムチタナイトをカット研磨したルースの特徴
もっとも特徴的なポイント等については、ここまでに書いてきましたので、特有の情報や数値なんかを紹介しておきますね。
【 ストロンチウムチタナイト / Strontium titanate 】
- 鉱物名:なし
- 宝石名:なし
- 製品名:ストロンチウムチタナイト
- 日本名:チタン酸ストロンチウム
- 商業名:ダイアジェム(Diagem)、ダイアモンチナ(Diamontina)等
- 結晶系:等軸晶系
- 製造時の形状:ベルヌイ法
- カラー:無色、黄色、黄褐色等
- 透明度:透明
- 光沢:ダイヤモンド光沢
- モース硬度:6程度
- 劈開:なし
- 断口:貝殻状または不平坦状
- 比重:5.13程度
- 偏光性:単屈折性
- 屈折率:n2.416程度
- 分散率:0.190
- 多色性:なし
- 分光性:特に吸収を認めず
- インクルージョン等:気泡、ラダー状構造
- 製造国:ロシア、アメリカ、日本、スイス等
あくまでメインの利用目的は工業製品となり、工業製品という特性上、その色合いや製造会社、製造された年代等によって情報や数値に違いがあるか事から参考程度ですね。
YAG同様に産業分野の重要な素材になる為、人造宝石として市場に流通するものは主にロシア(ソ連)といった古い時代に製造されたデットストックとなっていた人工結晶の原石が利用されているようです。
カラーバリエーションが限定的な事から、ともかく煌きや輝きを強く感じられる大粒サイズのカット研磨の良いルースが好まれる傾向がありますが、まだ完璧な透明無色が少なく、やや黄色っぽい色合いを感じるものとなっていますよ。
こちらのルースは色合い的には透明褐黄色をした濃い色合いをしたストロンチウムチタナイトのルースになります。
地色が暗色系だけに煌きや輝きが強調されて、これはこれでもう独特の世界観というか雰囲気を持っていますね。
今回、ご紹介した「ストロンチウムチタナイト」のスクエアタイプのシャンパンイエローも濃い色合いのラウンドタイプのルースも共にロシアのデットストックとなっていた人工結晶の原石からカット研磨したものでになりますよ。
雑談:天然ダイヤモンドの特性との比較
ちなみに「天然ダイヤモンド(宝石名:ダイヤモンド)」の屈折率や分光率なんかの特性を抜粋したものです。
【 ダイヤモンド / Diamond 】
- カラー:無色、黄色、黄褐色系等
- 補足:その他のピンク色等はファンシーカラーは近年になって注目される
ようになった色合いになります。 - 透明度:透明
- 光沢:ダイヤモンド光沢
- モース硬度:10
- 劈開:八面体に平行な四方向に完全
- 断口:貝殻状
- 比重:3.52程度
- 偏光性:単屈折性
- 屈折率:n2.417程度
- 分散率:0.44
- 多色性:なし
- 分光性:特に吸収を認めず
特に大きく異なる要素が「モース硬度」と「比重」と「屈折率」と「分散性」となり、中でも屈折率と分散率はダイヤモンドを上回る数値となっており、カット研磨次第ではダイヤモンドよりも強いブリリアンシーとファイヤーが生じます。
逆にモース硬度が低い為、傷付き易い事から次世代となる「YAG」や「GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)」へと移り変わり、その後、現在の「キュービックジルコニア:Cubic Zirconia」へと移り変わっていったんですね。
ダイヤモンドを意識した人造宝石の歴史
こうして個別の人造宝石を紹介していくと、いかにダイヤモンドに近い人造宝石を作るかに情熱というか様々な試行錯誤や移る代わりがある事を改めて感じますね。
まぁ、もともとの開発目的が違ってるのに逆にダイヤモンドのイミテーション的な役割を担ってしまう辺りが、ダイヤモンドという宝石の凄さでもあるのですが・・・
あたし自身、これまで書いてきた記事を通じて、ダイヤモンドよりも色石と呼ばれる宝石や稀少宝石と呼ばれる宝石のルースを好んでいるので、それ程、ダイヤモンドに対する興味がないので、人造宝石の中でもイミテーションダイヤというよりも個性的で特徴的なタイプの方が心を惹かれる事から、あまり深い知識は持ち合わせていないのですが、アバウトには下記のような推移があったんですよ。
【 ダイヤモンドを意識した人造宝石達 】
- 合成ルチル:1940年代後半ば
- ストロンチウムチタナイト:1950年代半ば
- YAG:1960年代
- ガドリニウム・ガリウム・ガーネット:1960年代後半~70年初頭
- キュービックジルコニア:1976年頃
- 合成モアッサイト:1997年頃
様々なメーカーか競い合って開発していた事と商標権等の要因から商業名が多く、時代的も古いのでアバウトな情報となっていますが、実際には、これらの人造宝石に加えて天然の鉱物(宝石)でもイミテーションダイヤモンドとして扱われていたものまである為、この分野に関しては興味のある方は頑張って調べてちょんまげ。
あまりメインとして取り扱っている訳ではない事もあって、所有数が少なくて文章の多い記事になってしまい、おまけに情報や数値等についても資料のあるものが少ない事もあり、ちょっと単なる読み物みたいな感じになっちゃいましたね・・・
ま、あたしのメインフィールドは宝石とか稀少宝石とか天然石とか糸魚川ヒスイとかなので、そうした記事で挽回するっす。
ちゅ~ような感じで、ち~ゆ~。
ΦωΦ
YAGの流れから考えると仕方ないよ。
ΘεΘ
慰めないで、そういうの逆に落ち込むから・・・・
ΦωΦ
了解。
ΘεΘ