猫車通信

糸魚川ヒスイと稀少石のお店「猫車(nekoguruma)」by Jewellery Studio Ijeluna

宝石に施される様々な人為的な処理について

宝石のエンハンスメント

 

現在の宝石や天然石やなんかの指向性としては、ともかく非加熱未処理、ルースならカット研磨以外の人為的な加工はされてない方がいい、逆に採取したり採掘した状態の鉱物標本のような自然のままの状態が価値があっていいよね?

 

ちゅ~ような風潮ちゅ~ようなのを感じますが、世界的な観点では宝石と呼ばれる石に関しては、美しさこそが絶対的なポイントって感じになっていたりもします。

 

 

以前までは、宝石に対して施される人為的な処理には「エンハンスメント(改良)」と「トリートメント(改変)」があって、前者のエンハンスメントは宝石の持っている潜在的な美しさを引き出す目的の処理であるのに対して、後者のトリートメントは宝石の持った本来の資質に関係なく見た目の色合いや外観を人工的且つ意図的に変えてしまう処理というような区別がされていたんすよ。

 

現在は、宝石鑑別書を見てもエンハンスメントやトリートメントといった表記もありませんし、宝石の鑑別機関は宝石の鑑別をする機関で宝石の価値を決める機関ではないので、徐々にエンハンスメントとトリートメントの区別が曖昧になりつつあります。

 

それでも依然として旧:エンハンスメントだったレベルの人為的な処理と旧:トリートメントだったレベルの人為的な処理では大きな違いがあるので、今回の記事ではそんな感じの事を少し書いてみたいと思っています。

 

 

宝石に対して施される人為的な処理の種類や扱い

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ちゅ~ように以前までは宝石に対して施される人為的な処理には「エンハンスメント(改良)」と「トリートメント(改変)」がありました。

 

エンハンスメントが宝石が本来持っている潜在的な美しさを引き出す目的なのに対して、トリートメントは自然界では起こり得ない人為的な処理を宝石に施す事を意味していたので、必然的にエンハンスメントなのかトリートメントなのかで価値が変わっていたのですが、現在では宝石の鑑別機関でも鑑別書にはエンハンスメントやトリートメントという記載はしないで、旧:エンハンスメントだったタイプのルースには「通常、〇〇〇がおこなわれています。」という記載がされるようになっています。

 

こうした人為的な処理の有無や程度については、そうした事を気にするかどうか、見た目で気に入ったなら問題ないかな?って感じの個々の判断となりますが、旧:トリートメントとして扱われていた処理石は時間の経過に伴って効果が薄れる場合もあるので少し注意が必要かもしれないっすよ。

 

★ちなみに画像のイエローサファイアは「拡散加熱処理」という色の変化を目的にした外部からの元素の拡散加熱処理が施されています。

 

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【宝石に対する人為的な処理の主な種類】

それでは、まず「旧:エンハンスメント」として扱われていた人為的な処理を紹介したいと思います。

 

  • 色の改善:一般加熱や放射処理等で宝石の潜在的な色合いを引き立たせる処理
  • 一般加熱処理:加熱による熱変成によって色の改善をする処理
  • 無色透明剤による含侵処理:主に宝石の内部に存在する瑕疵等を埋めて透明度を高め、耐久性を上げる為の処理
  • 油含侵処理:同上(主にエメラルドに施される)
  • ワックス処理:宝石の表面をワックスで磨き光沢感を出す処理(翡翠等に施される)

 

次に「旧:トリートメント」として扱われていた人為的な処理を紹介したいと思います。

 

  • 色の改善:着色や染色や有色物質の含侵処理で色の変化を目的とした処理
  • ベリリウム拡散加熱処理:宝石の表層付近に加熱したベリリウムを含油させる処理(主にコランダムに施される)
  • 色の変化:本来の宝石の色とは異なる色合いに変化させる処理全般
  • 高温高圧処理:低品質なダイヤモンドを高温高圧を掛けて色の変化を起こす処理
  • コーティング:金属の蒸着や金属皮膜コーティングや色の付いた樹脂等でのコーティング等の処理
  • 照射処理:放射線照射によって色の変化を生じさせる処理
  • 染色処理:石の色合いを変化させる目的で色素で染める処理
  • 脱色処理:化学薬品等を使って宝石の脱色や漂白をする処理

 

主な「旧:エンハンスメント」と「旧:トリートメント」となる処理は、このような感じになりますが、旧:トリートメントの扱いだった処理が施された宝石は一部を除くと現在でも評価は低くなっています。

 

いろいろな人為的な処理が施された宝石

サファイア

 

最小の方で紹介した「イエロー・サファイア」と同じ拡散加熱処理のひとつで「ベリリウム拡散加熱処理」が施されたサファイアのルースになります。

 

非常に人気の高い「パパラチアサファイア」が2000年初頭に大量に市場に登場した当時は、このベリリウム拡散加熱処理という技術を鑑別機関が人為的な処理石じゃない感じ、ぐんぐんパパラチアサファイアの鑑別書を発行しちゃった事もあり、多くのベリリウム拡散加熱処理されたルースが市場に流入してしまいました。

 

以来、とても基準が厳しくなり宝石鑑別機関でも簡単にパパラチアサファイアの鑑別書が作成できなくなってしまったんだよ・・・

 

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鉛ガラスルビー

 

こちらは主にルビー等の宝石に人為的に施される「鉛ガラス含侵処理」というタイプのルースとなります。

 

これはルビー等の宝石の内部にある瑕疵等に鉛ガラスを充填して瑕疵を目立たなくすると共に重量を持たせる人為的な処理となりますが、この処理に関しては何点かの留意点があります。

 

ひとつめはもともとの宝石の品質で、あまりにも瑕疵等の多い粗悪品に対して施こされた場合のルースと程々の程度の品質のものに施されたタイプがあり、それらによって同じ鉛ガラス含侵処理でも美しさに差が出るという事です。

 

もうひとつは、鉛ガラス含侵処理は宝石のルースひとつひとつに施す訳ではなく、大きな釜のような機械でいくつもの原石をいっぺんに処理する事から、その釜に鉛ガラスが付着してしまう為、本来は鉛ガラス含侵処理をしなくても良い品質のものであっても同じ釜を使ってしまうと微量ながらも宝石鑑別機関で鑑別した際に鉛ガラスの成分が検出されてしまう可能性が生じる事です。

 

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こちらのペンダントに使用している不透明赤紫色をしたスターサファイアも鑑別では、鉱物名:天然コランダム+鉛ガラス、宝石名:スターサファイア+鉛ガラスと記載されていますが、極めて微量で恐らく釜に付着していた鉛ガラスの成分が検出されたものと思われます。

 

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天然未処理と呼ばれる宝石はカット研磨を除いて一切の人為的な処理が施されていないものに限られますが、殆どの宝石は程度の違いこそあれ何らかの人為的な処理が施されています。

 

多少、色合いや見た目の品質が悪くても天然未処理を好む人もいれば、人為的な処理の程度が一般的な範疇で色合いや見た目が綺麗なタイプを好む人もいるので、どちらが良いとは言えないものの信頼できる宝石鑑別機関の鑑別書が付属したものや宝石に対する知識を持っている業者やお店で分からない事や疑問点を相談して、本当に気に入った宝石を手にして欲しいと思います。

 

ちゅ~ような感じで、真面目な話しを書いちゃったねぇ。

ち~ゆ~。

 

 

ΦωΦ

 

 

重要なのはバランスと感覚っすね。

ΘεΘ

 

そりゃ経験を積まなきゃ分からない事じゃん・・・

ΦωΦ