今回はですね、コレクター向けのカットストーンとなる稀少石のひとつ「ユーディアライト:Eudialyte」を紹介したいと思います。
ユーディアライトの場合、比較的に小さな結晶の鉱物となる為、母岩ごとカボッションカットにカット研磨した厳密には「ユーディアライト入り原石ルース」のようなタイプのものや透明度の低い濁った色合いをしたタイプのものがパワーストーン系の天然石として流通しているので、ユーディアライトという鉱物や宝石の名称についてはご存知の方も多いかもしれないっすね。
コレクター向けのカットストーン用の原石としては、この小さ目の結晶であるユーディアライトの中でも透明感が高く、鮮やかな色合いをしたものだけが該当するのですが、もともとの結晶サイズが小さい上、瑕疵等の内包物が多く、モース硬度も低く、酸に溶けやすい性質を持っているデリケートな宝石質のユーディアライトはカット研磨、特にファセット系のカットストーンにするのは非常に困難なので、こうした宝石質のカットストーンは殆ど市場に流通しない稀少石となっているんですよ。
これまで書いてきた記事の中でもコレクター向けのカットストーンが何種類かありますが、前々回の記事で紹介した「ビリオーマイト」に匹敵するカット研磨職人さん泣かせの稀少石かもしれません。
ちゅ~ような感じで、今回はコレクター向けの稀少石となる宝石質をした「ユーディアライト」の紹介になります。
ユーディアライトという鉱物について
先に書いたように流通している大部分のユーディアライトは、単体としてのユーディアライトではなく、赤系のユーディアライトと白系~薄白緑系のネフェリンと黒系のエジリン等の複数の鉱物が混在した状態の岩石の鉱物標本、或いは、そうした岩石をカボッションカットにした複数の色合いが混在したカボッションカットのルース、或いは透明度が低かったり、色合いの鮮やかな乏しいピンク~レッド系の色合いをしたユーディアライトとなっています。
ピンク~レッド系の色合いで他の鉱物が一緒にカット研磨されていないユーディアライトも多くは透明感が感じ難く、全体的に瑕疵等の内包物が多いものの宝石質のカットストーンに比べると比較的に大き目サイズのカボッションカットがあり、これはこれで独特の色ムラや透明感が低い事で得られる濃い色合いを楽しめると思います。
ちゅ~ても、こうした他の鉱物と一緒にカット研磨されていないユーディアライトも産出量的には少なくなり、サイズが大き目という事もあって現在では宝石質のコレクター向けのカットストーン同様に市場流通量は少なく、それなりの価格となっていますよ。
この写真のように赤色系~白・薄白緑色系~黒色系等の複数の色目の混色系をしたタイプがパワーストーン系の天然石として大量に市場に流通した事から、現在は「ユーディアライト」といえば思い浮かぶのが、こうした母岩ごとカット研磨されたタイプになると思います。
実際には、鉱物とてしてのユーディアライトは赤色系の部分だけで母岩に小さなユーディアライトの結晶が含まれた状態でカット研磨されたものになります。
これはこれで独特の印象と色合いや柄模様の面白さもありますが、コレクター向けのカットストーンとなると完全に赤色系のユーディアライト単体で透明感が高く、鮮やかな色合いをしたカット研磨のクォリティーの良いものに限られるので稀少性という意味では比較にならない程に少なくなるんですね。
ユーディアライトの特徴や数値といったデータについて
ユーディアライトの名称は、ギリシャ語の「eu:容易に」と「dialuein:溶ける」に由来していますが、これは酸に溶け易い性質を持っている事に起因しています。
また、鉱物的にも12以上という多くの主成分となる元素を持った珍しい鉱物となる点も愛好家さんや蒐集家さんの多い理由のひとつになっています。
主な産地は、ロシア、アメリカ、カナダ、グリーンランド、ノルウェー等になりますが、色合いとしては特に真紅と言っても過言ではない美しい赤色をしたものが代表的なカラーとなり、上質なタイプは主にロシアやカナダで産出していました。
ただ徐々にもともと稀少性が高かった宝石質の透明感の強い鮮やかな赤色をしたルースだけでなく、透明感は乏しくても色合いが綺麗な原石の産出量は減少している状態になります。
30年くらい前は、海外の買い付けでも稀に宝石質の美しい真紅のユーディアライトのカットストーンを目にする機会がありましたが、現在では原石が産出しない事に加え、こうしたデリケートで緻密なカット研磨を求められるカットストーンをカット研磨する職人さんがいなくなった事もあって、現状で愛好家さんや蒐集家さんの所蔵品となっているものやデットストックとして眠っていたルース以外では見る機会がない稀少石となっているようです。
ここで紹介した2枚の画像は、あたしがコレクションしていたカナダ産の透明感の高い鮮やかな赤色をした宝石質のユーディアライトのカットストーンとなり、こうした宝石質の高品質なユーディアライトとしては大粒サイズとなる素晴らしいカット研磨が施されたルースになります。
どうしても特に大粒サイズになる程、瑕疵等の内包物が見られますが、こうした透明感の高い真紅って感じの色合いをした宝石は種類が少ない事もあり、人気があるんですね。
【 ユーディアライトの特徴や数値について 】
- 鉱物名:天然ユーディアライト
- 宝石名:ユーディアライト
- 和名:ユーディアル石
- 結晶系:六方晶系、三方晶系
- 産出形状:板状、菱面体結晶
- カラー:ピンク~赤色、褐色系等
- 透明度:透明~半透明(宝石質は透明)
- 光沢:ガラス光沢
- モース硬度:5~5.5程度
- 劈開:明瞭
- 断口:平坦状
- 比重:2.74~2.98程度
- 偏光性:複屈折性
- 屈折率:1.591~1.663程度
- 多色性:認む(但し、産状等によって異なる)
- 分光性:特有の吸収を認む
- インクルージョン:液体包有物、液膜包有物等
- 産地:宝石質は主にロシア及びカナダ
カット研磨される程の透明度と鮮やかな色合いをした原石は非常に特殊な為、省略される要素が多いのですが、宝石質のタイプはロシアやカナダといった産地のものが多くなります。
モース硬度も低めでデリケートな為、コレクター向けのカットストーンでも殆ど存在しない宝石質のユーディアルライトは、ジュエリー等の装飾品に加工される事も殆ど考えられない稀少石になる事から、かなり究極のコレクターズアイテムですが、こうした趣味的な要素が強く、実用的でないものにしか感じられない魅力があり、あたしは好きで、こんなんばっかり所有しているんだよ。
ちゅ~感じで、ち~ゆ~。
ΦωΦ
知名度の高い中でのマニアック路線。
ΘεΘ
小さいけど存在感があって好きなんです。
ΦωΦ
でも大きなルースの方が好きでしょ?
ΘεΘ
ユーディアライトでは、これが大粒なんだよ。
ΦωΦ