猫車通信

糸魚川ヒスイと稀少石のお店「猫車(nekoguruma)」by Jewellery Studio Ijeluna

スピネル(前編):Spinel

スピネル宝石

 

今回は、あたし的には個人的に好きな宝石となる「スピネル:Spinel」の記事となりますよ。

 

鮮やかな澄んだ透明感のある色合いと多彩なカラーバリエーションが存在するスピネルの記事だけに記事の内容や流れをどうしようか少し悩みましたが、前編と後編に分けて、それとは別に特殊なタイプのスピネルについての記事の合計で3つの記事にする事にしちゃいます。

 

今回の記事は「スピネル:Spinel」の前編という事になりますよん。

 

 

雑学:宝石業界でのスピネルの位置付け

宝石というのは長い歴史の中で格付けが根付いているんですよ。

 

そんな宝石業界では、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、アレキサンドライト、ブラックオパール、パール、ヒスイといった代表的な宝石の中で品質やサイズ、カット研磨、産地といった要素に基づき細分化され、そうした宝石の中での更なる格付けがされています。

 

その意味では、スピネルやジルコンといった宝石に関しては、その美しさや素晴らしさに見合った評価がされていませんでした。

 

時代が流れ、時が経ち、多くの宝石が時代時代の主要産地で枯渇してしまったり、産出量が減少した事から、現在は還流品の割合が増え、本当に素晴らしい宝石の多くは市場に流通する事なく個人所有や非売品として扱われています。

 

スピネルはカラーバリエーションの豊富さや産出される鉱床がルビーやサファイアといったコランダムと同じ産地だった事もあり、ルビーやサファイアよりもワンランク劣った宝石というポジションの宝石として扱われてきたんですね。

 

長い歴史の中で慣習化した価値の基準なんかは、それはそれで現在とは違っているのも当然ですが、そうした時代の変化、文化や生活の変化を少し感じながら、スピネルという宝石の魅力を感じてもらいたいと思います。 

 

 

 

 鉱物グループとしてのスピネルについて

レッドスピネル

 

スピネルも鉱物的には「スピネル・グループ(スピネリズ)」という鉱物グループとなっています。

 

主に八面体の等軸結晶系の鉱物でマグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、アルミニウム、クロム、コバルト等の元素成分によって各種のスピネルとなっています。

 

宝石として用いられるスピネルは主に鉱物的には「マグネシア・スピネル」となり、その他には「ヘルシナイト」や「ガーナイト」、それらの中間的なタイプのものとなります。

 

また、鉄鉱石類となる「マグネタイト」、「クロマイト」等も「スピネル・グループ」に含まれています。

 

【 スピネル・グループ(スピネリズ) / Spinel Group 】

  • スピネル:スピネル(マグネシア・スピネル)
  • ヘルシナイト:鉄スピネル
  • ガーナイト:亜鉛スピネル
  • ガラクサイト:マンガンスピネル
  • マグネタイト:磁鉄鉱
  • クロマイト:クロム鉄鉱
  • ヤコブサイト:ヤコブス鉱
  • マグネシオクロマイト:クロム苦土鉱
  • その他:中間タイプ等もあり

 

 

あたしは宝石として扱われるタイプでカット研磨されたルースがメインなので結晶といった鉱物標本は専門外ですし、鉱物学よりも宝石学に基づいてスピネルを扱っているのですが、鉱物的にも魅力的でスピネルの結晶なんかの鉱物標本にも多くの鉱物ファンがいるんですよ。

 

ちゅ~ような感じで何気に多種多様なバリエーションの存在するスピネルですが、ここでは宝石として扱われるスピネルについて紹介していきますね。

 

 

 

宝石として扱われるスピネル

多種多様なバリエーションの存在する「スピネル」は、カラーバリエーションも豊富でイエロー以外の殆どの色合いが存在します。

 

その中でも主に宝石として扱われる色合いは、鮮やかで透明感のある赤色系、ピンク色系、橙色系、緑色系、青色系、紫色系の色合いとなり、透明無色、灰色系、黒色系といったタイプも品質によっては宝石として扱われます。

 

ちゅ~ような感じの宝石としての「スピネル」の中でも代表的なカラーは、鮮やかな赤色をした「レッド・スピネル」、美しい青色をした「ブルー・スピネル」となり、これらの色合いは、赤色はルビー、青色はサファイアと比較される事が多かった事から、あまり高い評価を得られなかったもののスピネルとしては比較的に高い評価を得ていた色合いとなります。

 

現在では、スピネルは宝石としても一定の評価を得ており、ルビーやサファイヤといったコランダムとは違った魅力を感じられる事からファンも増えてきましたが、その背景には先に書いた鉱物としての結晶形がダイヤモンドと同じ八面体であったり、多彩なカラーバリエーションがあっても全て天然未処理でカット研磨以外には何の人為的な処理が加えられていない事なんかも理由としては考えられます。

 

どちらにしても時代が変わり、多様性が生まれた事により、いろいろな宝石や天然石や鉱物といった楽しみ方が増えたんですね。

 

スピネル

 

 

 

宝石として扱われるスピネルについて

カラーや産地による差異はありますが、参考的な情報と数値は下記のようになります

 

【 スピネル / Spinel 】

  • 鉱物名:天然スピネル
  • 宝石名:スピネル
  • 宝石名の補足:赤色のスピネルは「レッド・スピネル」の名称
           青色のスピネルは「ブルー・スピネル」の名称
  • その他:稀にコバルトに起因したブルー・スピネルがあり、その場合は慣例的に
        「コバルト・スピネル」と呼ばれます。
        またスリランカ産のガーノスピネルは亜鉛の含有があり特性値が異なり
        ます。
  • 和名:尖晶石
  • 結晶系:等軸晶系
  • 産出形状:八面体結晶、双晶、塊状等
  • カラー:赤色、ピンク色、赤紫色、青色、緑色、紫色、橙色、褐色、無色、灰
        色、黒色等
  • 透明度:透明
  • 光沢:ガラス光沢
  • モース硬度:8程度
  • 劈開:なし
  • 比重:3.58~3.98程度
  • 偏光性:単屈折性
  • 多色性:認めず
  • 分光性:赤色系やピンク色系はクロムライン
        青色系はアイアンバンド
  • インクルージョン:結晶、液膜、液体、微小等
  • 産地:スリランカ、ミャンマー(旧:ビルマ)、パキスタン、カナダ、フラン
       ス、イタリア、ロシア、インド、アメリカ等
  • 代表的なカット:特になし

 

 

亜種として、カラーチェンジ効果のあるスピネル、スター効果のあるスピネル、キャッツアイ効果のあるスピネル等、特殊な光彩効果を持ったスピネルがありますが、ここでの説明は省略しますね。

 

宝石としての「スピネル」では、ビルマ:モゴック産のレッド・スピネル、スリランカ産のレッド・スピネル、鮮やかな青色をしたコバルト・スピネル等は、その美しさから宝石として扱われるスピネルの中でも別格の扱いとなっています。

  

 

 

レッド・スピネルのルース

レッドスピネル

 

ビルマ:モゴック産の濃い赤色をしたレッド・スピネルとスリランカ産のレッド・スピネルを好んで買い付けていたのですが、ルビーとは違った独特の美しさがあって大好きなんですよ

 

ルビーと比べれば安価とはいえ、レッド・スピネルはスピネルの中では高価だった事もあり、それ程、多くのルースを所有していませんが、素晴らしい宝石ですよ。

 

shop-nekoguruma.com

 

 

 

レッドスピネル

 

スリランカ産のレッド・スピネルは稀少で、他の色合いに比べて産出量が少ないのですが、色味が鮮やかで透明感のある魅力的なルースが多かった記憶があります。

 

現在だと品質の良いピンク・スピネルの産地として有名ですが、あたしが買い付けをししていた当時は、ビルマ:モゴック産に劣らない高品質なルースがありました。

 

もしかすると産地はモゴック産でカット研磨だけがスリランカだったのかもしれませんが、当時のインボイスではスリランカ産レッド・スピネルと記載してあったので、スリランカ産として扱っています。

 

shop-nekoguruma.com

 

 

 

f:id:ijeluna:20170509034023j:plain

  

このルースもスリランカ産のレッド・スピネルですが、あたしが海外での宝石の買い付けをしていた当時から、あまり大粒サイズのレッド・スピネルがなく、そこまで大粒のルースを買い付ける事ができなかったのが残念です。

 

あまり多くはないレッド・スピネルの中で選りすぐりの宝石品質のハイエンドなルースばかりを買い付けてきましたよん。

 

shop-nekoguruma.com

 

 

 

近年では、タンザニア産の濃いピンク色系をしたタイプなんかもレッド・スピネルとして扱われるようですが、あたしの世代だとビルマ産やスリランカ産がメインだった事もあり、何となく色合い的な違和感を感じるものの独特の雰囲気があって興味が惹かれますね。

 

 

 

レッド・スピネルの楽しみ

今回の記事では主に宝石として扱われる「スピネル」の中でも代表的な色合いとなる「レッド・スピネル」について紹介してきました。

 

澄んだ透明感、鮮やかな色合い、素晴らしいカット研磨といった様々な魅力を写真で伝え切る事ができないのが残念です。

 

次回の後編となる記事では、ブルー・スピネル(コバルト・スピネル)や他の色合いのスピネルなんかの紹介をしたいと考えていますが、代表的なカラーのレッド・スピネルと様々な色合いのスピネルを目にする事で、より「スピネル」という宝石の魅力が分かるんじゃないかなぁ・・・って思います。

 

鮮やかな赤色をした宝石としては、代表的なルビーが存在しますが、レッド・スピネルにしてもトルマリンの赤色をしたルベライトにしても基本的に透明宝石で赤色をしたものの多くは固有の宝石名を持っていたり、ある種、別格となり、その種類もそんなに多くはありません。

 

本当はもっと大粒サイズのレッド・スピネルのルースなんかを紹介できれば良いのですが、あまり大粒サイズのレッド・スピネルとは出会えなかった為、それ程の大きさではないまでも品質的に良いものを紹介してみました。

 

新産地や各種のニュアンスカラーのスピネルは比較的に市場に流通するようになりましたが、あまり高品質のレッド・スピネルは逆に見掛ける機会が少なくなってきたので、素敵な出会いがあるといいなぁ・・・って思っています。

 

 

ちゅ~ような感じで、後編に続く。

 

ち~ゆ~。

 

 

ΦωΦ

 

 

スピネル登場ですね。

ΘεΘ

 

本当は単発記事にしたかったんだけど成り行きです。

ΦωΦ

 

まぁ、いつかは紹介するんだからいいじゃん。

ΘεΘ