猫車通信

糸魚川ヒスイと稀少石のお店「猫車(nekoguruma)」by Jewellery Studio Ijeluna

デマントイド・ガーネット:Demantoid Garnet

デマントイドガーネット

  

ようやく多種多様なガーネットの中でも頂点に君臨する「デマントイド・ガーネット:Demantoid Garnet」の登場です。

 

デマントイド・ガーネットはガーネットの中でも最上位となるガーネットでもありますが、世界各地の様々な宝石や稀少宝石の中でも別格の稀少宝石として取り扱われている極めて稀少性が高く、多くの宝石愛好家さんや蒐集家さん達の憧れとなっている特別な宝石になり、正式な宝石名として「デマントイド・ガーネット」という固有の宝石名を有している宝石なんですよ。

 

もっとも別格として扱われるデマントイド・ガーネットに関しては、1800年代半ば~1900年代の初頭に掛けてからロシア:ウラル山脈で産出した鮮やかな濃緑色をしたルースで、ホーステール・インクルージョンと呼ばれる微細な馬の尻尾のような内包物が入った一部のルースに限られ、その当時の多くのルースはアンティークジュエリー等として還流しているか、熱狂的な宝石コレクターの秘蔵品としてしか存在していないのです。

 

基本的な6種類のガーネットとしては「アンドラダイト・ガーネット」の緑色をした亜種となるタイプとなり、ロシア産で高品質なデマントイドの産出量の減少に伴って、現在はナミビア産やマダガスカル産でも宝石鑑別機関の発行する宝石鑑別書に「デマントイド・ガーネット」と明記されるルースは産出していますが、1860年代頃にロシア:ウラル山脈で産出されていたような鮮やかな濃緑色をしたルースは産出しておらず、その多くが非常に小粒サイズのルースとなっています。

 

デマントイド・ガーネット

 

 

ちょっと雑談:デマントイド・ガーネットとの出会い 

あたしの場合、まだインターネット等が普及する以前にずっとコレクター間で代々、引き継がれてきた一度もジュエリーに加工されていないヴァージンルースを何度も無理を承知でお願いして譲って頂いたのが切っ掛けでしたが、中央宝石研究所で改めて鑑別を依頼すると少なくても過去に、これ程のデマントイド・ガーネットが持ち込まれた事は殆どないという事で宝石鑑別の専門家さん達も非常に驚いた事で特に印象に残っている稀少な宝石のひとつとなっています。

 

デマントイド・ガーネットというよりも高品質なツァボライトのように濃緑色をしている上、サイズ的にも「1.714ct」とデマントイドとは思えない程の大粒サイズだった事もあり、中央宝石研究所の担当スタッフも最初は半信半疑といった様子でしたが、鑑別した結果、過去の膨大なデータの中でも突出した美しさとサイズを持ったデマントイドだったので、あたし以上に興奮していました。

 

あたしも既に少しずつ特別な宝石や別格となるようなハイエンドなルースを次世代や次の後継者に託していく為、糸魚川翡翠と稀少石のお店「猫車(nekoguruma)」さんを通じて、本当に価値の分かってもらえる方に受け継いでもらっている最中ですが、別格となる「デマントイド・ガーネット」に関しては価値を理解できる方に受け継いでもらう事ができて少しばかり肩の荷が下りた気分でいます。

 

1800年代半ば~1900年代初頭の頃にロシア:ウラル山脈で産出した完璧なデマントイド・ガーネットは現在では殆どが還流品となっていますが、それでも宝石としてガーネットという概念を捨て、究極の宝石という意識でないと絶対に手が出せない高価な宝石になっていますよ。

 

最初に出会ったのが最高品質のデマントイド・ガーネットだったという事もあって、それ以上のデマントイドと巡り会うことは二度とないでしょうから、あたしの中ではデマントイド・ガーネットは打ち止め、その後は何となく趣きを感じるロシア産のデマントイド・ガーネットを少しばかりジュエリー製作したりしている程度です。

 

一生の中で一度でも巡り会う事ができて、例え数十年でも所有する事ができただけでも恐ろしく運が良かったと思える特別な稀少宝石のひとつが今回の記事で紹介するロシ:ウラル山脈の1800年代半ば~1900年代初頭に産出した別格の「デマントイド・ガーネット」になります。

 

 

デマントイド・ガーネットとの特徴

デマントイド・ガーネット

 

基本的な6種類のガーネットの中で「アンドラダイト・ガーネット」の亜種で緑色をしたタイプが「デマントイド・ガーネット」となりますが、この「デマントイド」という名称は分散度が「0.057」というダイヤモンドを凌ぐ強さを有する事から「ダイヤモンド」に因んで命名された正式な固有の宝石名となります。

 

雑談:自然界に存在する分散度の高い主要宝石

  • アナテース:0.213~0.259程度(屈折率:2.488~2.497程度)

  • スファレライト:0.156程度(屈折率:2.37~2.47程度)

  • キャシテライト(透明な宝石質):0.071程度(屈折率:2.097~2.101程度)

  • デマントイド・ガーネット:0.057程度(屈折率:1.86~1.89程度)

  • スフェーン:0.051程度(屈折率:1.87~2.21程度)

  • アングレサイト(透明な宝石品質):0.044程度(屈折率:1.87~1.89程度)

  • ダイヤモンド:0.044程度(屈折率:2.41程度)

  • ベニトアイト:0.044程度(屈折率:1.757~1.804程度)

  • ジルコン:0.039程度(屈折率:1.780~1.925程度)

 

 

この内、一般的に宝石や稀少宝石として扱われるものは、スファレライト、デマントイド・ガーネット、スフェーン、ダイヤモンド、ベニトアイト、ジルコンとなり、その他はコレクション的な意味合いの強い稀少宝石や鉱物となっています。

 

宝石としての稀少性、美しさ、モース硬度、分散率、屈折率といった様々な要素を総合的に判断しても「デマントイド・ガーネット」は、宝石の代表格となる「ダイヤモンド」に因んだ名称で呼ばれるに相応しい宝石なんですね。

 

尚、合成や人造宝石では、「合成ルチル:0.280」や「ストロンチウムチタナイト:0.190」「YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):0.028」といった高い分散度を持つものもあります。

 

 

デマントイド・ガーネットについて

デマントイド・ガーネット

 

同じ「デマントイド・ガーネット」といっても品質はピンキリですが、最高品質と呼ばれ宝石愛好家の憧れとなっているのは、上の写真のような1800年代半ば~1900年代初頭のロシア:ウラル山脈で産出したホーステル・インクルージョンの内包した鮮やかで濃い緑色をしたハイエンドなルースになります。

 

全てではないものロシア産でも色合いの淡いタイプ、ホーステール・インクルージョンが多過ぎて透明度が低いものから逆に少な過ぎて個性的で重要な特徴が見えないものもあり、そうしたポイントも宝石としての評価に影響しますが、特に近年になって市場流通量が増えてきたナミビア産のデマントイド・ガーネットは明らかに彩度が低く、色合い的にはオリーブグリーンのような黄緑色をしたものが目立つようになりました。

 

こうした色合い的に鮮やかな濃い緑色をしていないもの、サイスが小さ過ぎるものはコレクションとしては面白いと思いますが、宝石としての評価は大きく下がるので、デマントイド・ガーネットのようなクラスのハイエンドな宝石や稀少宝石に手を出すなら多少、無理をするくらいの方が良いと思いますよ

 

【 デマントイド・ガーネット / Demantoid Garnet 】

  • 鉱物名:天然ガーネット
  • 宝石名:デマントイド・ガーネット
  • 補足:アンドラダイド・ガーネットの緑色タイプをした亜種
  • 特徴:極めて稀少性が高い宝石
  • 和名:翠柘榴石
  • 結晶系:等軸晶系
  • 産出形状:斜方十二面体結晶、偏菱二十四面体結晶等
  • カラー:緑色、緑黄色
  • 透明度:透明
  • 光沢:亜ダイヤモンド光沢
  • モース硬度:6.5~7程度
  • 劈開:なし(但し、裂開は一方向に明瞭)
  • 断口:亜貝殻状または不平坦状
  • 比重:3.82~3.85程度
  • 偏光性:単屈折性(異常複屈折)
  • 多色性:認めず
  • 分光性:クロムライン微弱
  • インクルージョン:ホーステール状包有物、液体包有物等
  • 産地:ロシア、イタリア、ザイール、ナミビア等
  • 代表的なカット:特になし

 

 

程良くホーステール・インクルージョンという包有物が入っている事がプラス評価となる為、スタンダード(ハイエンドとは言え)な宝石としてはインクルージョンが内包する事で評価が高くなる珍しい特徴を持っています。

 

 

 

おまけ:アンドラダイド・ガーネットについて

「アンドラダイト・ガーネット」は基本的な6種類のガーネットのひとつとなり、特殊な亜種タイプが多く存在しています。

 

デマントイド・ガーネットもそんな亜種のひとつとなりますが、特徴的に光の分散度が強いガーネットの種類になりますよ。

 

アンドラダイト・ガーネット

 

【 いろいろなアンドラダイド・ガーネットのタイプ 】

  • 褐色系:アンドラダイト・ガーネット(Andradaite Garnet)

  • 黄色系:トパゾライト(Topazolite)

  • 緑色系:デマントイド・ガーネット(Demantoid Garnet)

  • 黒色:メラナイト(Melanite)

  • 褐色にイリデッセンス効果:レインボー・ガーネット(Rainbow Garnet)

 

 

黄色系(黄色~帯緑黄色)のタイプは、トパーズに似た色合いという事で「トパゾライト」と呼ばれていますが、「イエロー・デマントイド」と呼ばれる事もあります。

 

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 ちゅ~ような感じで、アンドラダイト・ガーネットについての情報も紹介しておきますが、色合いやタイプによって数値等に差異があるので、参考的な情報になりますよ。

 

【 アンドラダイト・ガーネット / Andradite Garnet 】

  • 鉱物名:天然ガーネット
  • 宝石名:アンドラダイト・ガーネット
  • 和名:灰鉄柘榴石
  • 結晶系:等軸晶系
  • 産出形状:斜方十二面体結晶、偏菱二十四面体結晶等
  • カラー:褐色、緑色、緑黄色、黄緑色、黄色、黒色、茶褐色
  • 透明度:透明(黒色石とイリデッセンス効果タイプは不透明)
  • 光沢:ガラス光沢もしくは亜ダイヤモンド光沢
  • モース硬度:6.5~7程度
  • 劈開:なし(但し、裂開は一方向に明瞭)
  • 断口:亜貝殻状または不平坦状
  • 比重:3.82~3.85程度
  • 偏光性:単屈折性(異常複屈折)
  • 多色性:認めず
  • 分光性:クロムライン微弱
  • インクルージョン:結晶、液体等
  • 産地:ロシア、イタリア、ザイール、ナミビア、スイス、アメリカ、日本、メキ
       シコ等
  • 代表的なカット:特になし

 

 

この中で「イリデッセンス効果」が生じる「レインボー・ガーネット」については、次回の記事にて紹介するので詳細は省略しますね。

  

 

デマントイド・ガーネットを使ったジュエリー

デマントイド・ガーネットのリング

 

鮮やかな濃い緑色をしたルースでロシア産となると小粒サイズであればジュエリーにしても良いのですが、1ctを超えるような一度もジュエリーに加工されていないヴァージンルースともなるとプレミアものなので、ジュエリーに加工する場合は、デマントイド・ガーネットとしての石の品質を落とすか、小粒のサイズを使う事が多いんです。

 

このリングは、ルースのサイズは大粒で存在感があるものの緑色の彩度が弱く、ホーステール・インクルージョンの内包量が多い為、透明度が低くなっているので、ロシア産のデマントイド・ガーネットとしては程々といったものですが、どことなく侘び寂びを感じる趣きがあるルースなので気に入っているんですよ。

 

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新作リング

 

こちらは新作のゴールドリングですが、販売時期は未定となっています。

 

 ちゅ~ような感じで、宝石が好きな人にとっての憧れの宝石のひとつとなる「ロシア産:デマントイド・ガーネット」でしたが、素晴らしいと感じられるグレードとサイズのルースは市場流通量が少ない上、とても高価なんですね。

 

ガーネットに限らず、多種多様な宝石の中でも特にハードルが高いものになると思いますが、あたし個人的には高品質のデマントイド・ガーネットを扱っているかいないかで、その宝石屋さんや宝石商の格が決まると言っても過言ではないと思っています。

 

そのくらい稀少性が高い上、上級者向けの宝石なんですが、宝石やジュエリーは心を豊かにする為のアイテムですから、ご自身にとって居心地が良く楽しめる事が大切です。

 

いろいろな価値観のある中で宝石やジュエリーを末長く大切にして欲しいと思っていますよん。 

 

ちゅ~ような感じで、次回がガーネット・シリーズの最終回かな?

 

ち~ゆ~。

 

 

ΦωΦ

 

 

デマントイドは中宝研の人が言葉を失っていたね。

ΘεΘ

 

ま、そんな宝石や稀少宝石も数え切れない程あるっす。

ΦωΦ

 

凄く大切にしてきた秘蔵品だったもんね。

ΘεΘ