前々回から引き続いて書いている「神秘的なインクルージョンの世界と魅力:3」となり、今回はインクルージョン系の稀少宝石の中でも別格となる稀少価値を持った特殊なインクルージョンの内包したルースを紹介しますね。
こちらで紹介する特殊な稀少タイプのインクルージョン系の宝石や稀少宝石は産出量が極まて少ないタイプだったり、固有の通称となるインクルージョン名が付いているタイプだったり、特定の産地の特定の宝石にのみ存在するインクルージョンだったり、その多くは市場流通性が殆どない為、宝石や稀少宝石の愛好家さんや蒐集家さんの憧れともいえる究極のインクルージョン系の宝石や稀少宝石になりますよ。
特殊なタイプのインクルージョンについて
稀少性、自然の生み出した造形美、宝石としての美しさ等、ここで紹介する特殊なタイプのインクルージョンが内包した宝石や稀少宝石は、インクルージョンが内包した宝石や稀少宝石としては例外的にインクルージョンが存在する事で明らかな付加価値を持ったタイプとなります。
- 特定の宝石で特定の産地でも必ずしも見られない稀少な内包物タイプ
- 自然の生み出した構造美や造形美が感じられる極めて稀少なタイプ
- 存在する確率が極めて低い稀少なタイプ
- 内包物の形状と生み出す光彩効果が特殊で固有名称で呼ばれるタイプ
前々回~前回の「神秘的なインクルージョンの世界と魅力:1&2」で紹介したインクルージョンを内包した宝石や稀少宝石や稀少石のルースと比べて桁外れの稀少性を持つ事から目にする機会もないかもしれないインクルージョンがポイントになったルースですよん。
ロシア産デマントイドガーネット
インクルージョンが内包した稀少宝石としては、もっとも稀少価値が高く高価な宝石となる「ロシア産デマントイドガーネット」になります。
ロシア産のデマントイドガーネットの特徴はホーステール状インクルージョンと呼ばれる馬の尻尾のような微細なインクルージョンが入っていると付加価値が上がるというところです。
小粒サイズや色合いの彩度が悪かったり、インクルージョンが入り過ぎて透明度が落ちたりすれば価値は下がりますし、ロシア産以外の産地から産出したデマントイドガーネットも価値は大幅に下がってしまします。
【ロシア産デマントイドガーネットの詳細データ】
- 鉱物名:天然ガーネット
- 宝石名:デマントイドガーネット
- 透明度と色:透明緑色
- 屈折率:1.81以上
- 偏光性:単屈折性
- 多色性:認めず
- 蛍光性:認めず
- 比重:約3.84
- 分光性:クロムライン微弱
- 拡大検査:ホーステール状内包物
★個々のルースによって各数値や特性に差異があります。
メキシコ産ノントロナイト・インクルージョン・イン・ダンビュライト
メキシコ産の稀少宝石のひとつとなる「ダンビュライト」は高品質なものは水晶を超える透明感を持っているのが特徴で鉱物的に劈開性がない事から美しいカット研磨を施されたルースがありますが、こちらは「ノントロナイト」の胞子状インクルージョンが美しい芸術作品のように宙に浮かんで見える個性的なインクルージョンタイプのダンビュライトとなります。
自然の生み出した造形美や構造美とカット研磨をした職人さんの技術とセンスが結び付いて誕生した他にはない存在感を持ったコレクションルースになります。
【メキシコ産ノントロナイトインクルージョンインダンビュライトの詳細データ】
- 鉱物名:天然ダンブライト
- 宝石名:ダンブライト
- 補足:ダンビュライトでも可
- 透明度と色:透明無色
- 屈折率:1.636-1.630
- 偏光性:複屈折性
- 多色性:認む
- 蛍光性:認む
- 比重:3.00(静水法)
- 分光性:ディディミウムラインを認む
- 拡大検査:結晶内包物・液体包有物
★個々のルースによって各数値や特性に差異があります。
中国産サンスパングル・インクルージョン・イン・ペリドット
まるで蓮の葉のような形状をしたインクルージョンから「ウォーターリリー・リーフパット・インクルージョン・イン・ペリドット」の別名も持ったペリドットですが、光を反射してキラキラと煌く様子から西洋ではスパンコールを意味する「サンスパングル・インクルージョン・イン・ペリドット」と呼ばれている結晶包有物と液膜包有物がインクルージョンとして内包された特殊な光彩効果を持ったペリドットのルースです。
アメリカ産のタイプに比べてインクルージョンの煌きが強く、とても存在感があって美しいインクルージョンタイプのペリドットになりますよ。
【中国産サンスパングル・インクルージョン・イン・ペリドットの詳細データ】
- 鉱物名:天然オリビン
- 宝石名:ペリドット
- 通称:サンスパングル・インクルージョン・イン・ペリドット
- 通称:ウォーターリリー・リーフパット・インクルージョン・イン・ペリドット
- 透明度と色:透明黄緑色
- 屈折率:1.69-1.65
- 偏光性:複屈折性
- 多色性:認む
- 蛍光性:認めず
- 比重:約3.34
- 分光性:アイアンバンドを認む
- 拡大検査:液膜内包物・結晶包有物
★個々のルースによって各数値や特性に差異があります。
メキシコ産エッグ・イン・ファイヤーオパール
まるでタマゴのように見えるメキシコ産の「エッグ・イン・ファイヤーオパール」となり、完全に中央の黄味の部分が母岩のファイヤーオパールに内包している為、鑑別書では白色内包物と記載されてしまいますが、インクルージョンとして内包されているのは「クリストバライト」という鉱物だと言われています。
非常に稀少なタイプのファイヤーオパールとなり、殆ど採取される事がない上、このルースのように形やバランス良く内包した状態でカット研磨されたルースは見掛ける事がない奇跡のルースだと思いますよ。
近年では、エチオピア産のエッグ・イン・オパールも登場してきましたが、耐久性や耐乾燥性といった部分でファイヤーオパールとしてはエチオピア産のオパールとは比較にならない程の稀少価値があります。
【メキシコ産エッグ・イン・ファイヤーオパールの詳細データ】
- 鉱物名:天然オパール
- 宝石名:ファイヤーオパール
- 通称:エッグ・イン・オパール
- 通称:エッグ・イン・ファイヤーオパール
- 透明度と色:透明オレンジ色
- 屈折率:1.42(スポット法)
- 偏光性:単屈折性
- 多色性:認めず
- 蛍光性:認めず
- 比重:省略
- 分光性:特に必要な吸収を認めず
- 拡大検査:特有の構造・白色包有物
★個々のルースによって各数値や特性に差異があります。
メキシコ産エッグ・イン・ファイヤーオパール (巨大ルース)
同じくメキシコ産の「エッグ・イン・ファイヤーオパール」ですが、極めて大粒サイズの不定形ルースとなっており、メキシコ産のファイアーオパールに相応しい強烈な色合いと激しく多彩な遊色効果(プレイ・オブ・カラー)を堪能できるハイエンドの稀少宝石となっています。
画像の中心部の少し下側には大きなエッグが入っていますが、画像では余りにも地色が鮮やかで強い上、多彩な遊色効果が写り込む為、少し分かり難いかもしれません。
ルースの裏面は波打つような凹凸感があり、すべて職人さんによるハンドポリッシュとなっている事もあって信じられない程の美しさをしていますよ。
【メキシコ産エッグ・イン・ファイヤーオパールの詳細データ】
- 鉱物名:天然オパール
- 宝石名:ファイヤーオパール
- 通称:エッグ・イン・オパール
- 通称:エッグ・イン・ファイヤーオパール
- 透明度と色:透明オレンジ色 遊色効果
- 屈折率:1.42(スポット法)
- 偏光性:単屈折性
- 多色性:認めず
- 蛍光性:認めず
- 比重:省略
- 分光性:特に必要な吸収を認めず
- 拡大検査:特有の遊色斑・白色包有物
★個々のルースによって各数値や特性に差異がありますが、この品質とサイズのルースは他では目にする機会がないかもしれません。
ちゅ~ような感じで、 神秘的なインクルージョンの世界と魅力について3回に分けて記事をかいてみましたが、少しはインクルージョンの魅力を伝える事ができたかしら?
無限とは言いませんが、まだまだ多くの様々なインクルージョンタイプの宝石や稀少石なんかのルースがありますが、今回のシリーズでは可能な限りバリエーションとタイプを紹介したかったので特に存在感や印象に残るようなルースを抜粋したつもりです。
もちろん、正統派、スタンダードな宝石も素晴らしいですし、とても美しいものですが、自然が生み出した構造美や自然美は時にスタンダードな宝石を超える美しさと魅力を感じさせてくれます。
かなり書くのが大変だったので、何だか喋り口調じゃなくて普通の文体になっちゃってますが、またいつの日か神秘的なインクルージョンの世界や魅力について改めて書きたいと思ってま~す。
ちゅ~ような感じで、ち~ゆ~。
ΦωΦ
なかなか濃ゆい内容の記事を書いたじゃん。
ΘεΘ
ほとんど雑談を書いてないもん・・・
ΦωΦ