今回、ガーネットの中でも一般的にイメージが浮かぶと思う「赤色系~暗赤色系~赤紫系」をした代表的なガーネットとなる「アルマンディン・ガーネット」と「パイロープ・ガーネット」を同時に紹介する事にしちゃいました。
この2種類のガーネットは共にアルミニウムタイプの「パイラルスパライト」と呼ばれるシリーズのガーネットとなり、世界各国から比較的安定的で産出量の多いガーネットとなっています。
(詳細は前回の「ガーネット・グループ」の記事を参照して下さい。)
厳密には異なる種類のガーネットとなるもの完全に純粋なタイプは少なく、多くが「アルマンディン」と「パイロープ」の成分を含有し合っている上、見た目の違いが認識できないし、稀産な珍しいタイプの宝石ではない為、余程の逸品しか宝石鑑別機関での宝石鑑別書が作成する事がありません。
従って、多くの場合、ま、とりあえず「ガーネット」って感じで販売されているでしょうが、その殆どが「パイロープ・アルマンディン・ガーネット」という通称で流通しているんですよ。
もちろん、アルマンディン或いはパイロープの単独石だった場合、明らかにどちらかの特徴が明瞭に表れているルースに関しては、それぞれ個別の正式な宝石名となりますが、市場流通価格として多くが天然石の品質レベルとなり価格差が殆どない事から、この2種類のガーネットのカット研磨されたルースにに関しては、単純に大きさ、色合い、色合いの鮮やかさ、透明感、瑕疵の有無や少なさ、カット研磨のスタイルや美しさといった直感的な判断で決めるのが一番なんですね。
但し、一部の産地のみで採取されるタイプの中には稀少性からプレミア価格となっているものもありますよ。
この記事では、「アルマンディン・ガーネット」と「パイロープ・ガーネット」はひとつの記事にまとめてしまいますが、それぞれ、純粋なタイプでは特徴や数値といった部分に差異が生じる事から、その辺りは個別に紹介していきますね。
アルマンディン・ガーネットについて
ガーネットを代表するタイプのひとつとなり、原石のサイズ的にも大きなものが産出する為、パイロープ等の他のガーネットの成分も含んだものや中間的な成分をしたロードナイト・ガーネット等のタイプとなっている事も少なくありませんよ。
高品質なものは産出量が多い事や原石のサイズが大きい事にも関わらず、それ程、多くない為、目を瞠るような美しさを持った大粒ルースを見掛ける事は少なかったりします。
【 アルマンディン・ガーネット / Almandine Garnet 】
- 鉱物名:天然ガーネット
- 鉱物名補足:鉱物学名「アルマンダイト:Almandite)」
- 宝石名:アルマンディン・ガーネット(単にガーネットと省略)
- その他の宝石名:アルマンダイト・ガーネット(単にガーネットと省略)
- 和名:鉄礬柘榴石
- 結晶系:等軸晶系
- 産出形状:斜方十二面体、偏菱二十四面体等の結晶
- カラー:赤色、暗赤色、帯紫赤色、帯褐赤色、帯褐黒色等
- 透明度:透明、半透明(スタータイプ等)、不透明(濃褐色~黒色系)
- 光彩効果:スター効果、キャッツアイ効果の見られるタイプあり
- 光沢:ガラス光沢または亜ダイヤモンド光沢
- モース硬度:7.5程度
- 劈開:なし(但し、裂開は一方向に明瞭)
- 断口:亜貝殻状または不平坦状
- 比重:3.95~4.25程度
- 偏光性:単屈折性(異常複屈折)
- 多色性:認めず
- 分光性:クロムライン
- インクルージョン:針状、粒子状、塊状、結晶等
- 産地:インド、ブラジル、マダガスカル、タンザニア、スリランカ、アメリカ、
カナダ等 - 補足:スターないしキャッツアイ・タイプはインド、アメリカのアイダホ州等
- 代表的なカット:特になし(スター及びキャッツアイはカボッションカット)
亜種となるタイプで固有の宝石名を持ったタイプや見た目の特徴等が異なるタイプは、改めて別の記事で紹介しますが、スターガーネットに関しては最後の方に紹介するね。
パイロープガーネットについて
アルマンディン・ガーネットと同じく代表的な種類のガーネットとなるパイロープガーネットは、一般的には少し暗い色合いをした濃赤色をしたガーネットでアルマンディン・ガーネットと違って比較的に小粒の結晶が多い為、カット研磨されたルースも小さ目のサイズが中心となっていますよ。
古くからヨーロッパではジュエリー等の装飾品として使われていた事から、アンティークジュエリー等でも見掛ける事が多いガーネットになり、暗い濃赤色なので赤色系の宝石としては落ち着いた印象を持っています。
【 パイロープ・ガーネット / Pyrope Garnet 】
- 鉱物名:天然ガーネット
- 宝石名:パイロープ・ガーネット(単にガーネットと省略)
- 和名:紅柘榴石
- 結晶系:等軸晶系
- 産出形状:斜方十二面体結晶、偏菱二十四面体結晶、砂利状
- カラー:血赤色、暗赤色、帯紫赤色、帯ピンク色等
- 透明度:透明
- 光沢:ガラス光沢
- モース硬度:7.25程度
- 劈開:なし(但し、裂開は一方向に明瞭)
- 断口:亜貝殻状または不平坦状
- 比重:3.65~3.75程度
- 偏光性:単屈折性(異常複屈折)
- 多色性:認めず
- 分光性:クロムライン、アイアンバンド
- インクルージョン:針状、粒子状、塊状、結晶、液体等
- 産地:チェコスロバキア、南アフリカ共和国、アメリカ、タンザニア、ブラジ
ル、ロシア、中国等 - 代表的なカット:特になし
パイロープ・ガーネットの赤色はクロム及び鉄分の含有に起因した色となり、純粋なパイロープは無色となりますよ。
近年では、アメリカ:アリゾナ州で蟻塚が作られる際に地中から運び出されたのが切っ掛けで発見されたと言われている通称:アントヒル・ガーネットと呼ばれるクロム起因の鮮やかな赤色をしたパイロープ・ガーネットも話題になりましたが、大粒サイズのものが少ないのが特徴です。
アルマンディン・パイロープ・ガーネットのルース
基本的に大粒で高品質の結晶が産出した場合は、とても丁寧で美しいカット研磨が施され、主にジュエリー用の宝石ルースとして取り扱われますよ。
微妙な成分の違いやカット研磨のスタイル等で色の濃さや印象が変わって見えますが、ジュエリー向けの宝石としてもアクセサリー向けの天然石としても鉱物標本としても人気があるので、もっとも手軽に楽しめるガーネットですね。
スター・ガーネットのルース
アルマンディン・ガーネットの中でスター効果(アステリズム効果)を示すガーネットとなり、等軸晶系の結晶をしている事から、構造的には交差した四条の光の筋が見られる十字スターとなりますよ。
透明度が高く鮮やかな色合いをした地色のタイプと透明感のない暗色系の地色のタイプがあり、前者の方が稀少性が高く宝石として扱われる事が多く、後者の方は大粒サイズのルースが多いのでアクセサリーや鉱物標本として扱われる事が多くなります。
以前までは、それ程、目にする機会のなかった珍しいタイプでしたが、現在はインドやアメリカ等での産出量が増えたのか見掛ける機会が多くなりましたね。
スター効果が見られるようにカット研磨のスタイルとしてはカボッション系のカットに限定されますが、結晶の角度とカット研磨によってキャッツアイ効果が見えるようになっているものもありますよ。
こちらは透明度の高い鮮やかな色合いをしたスターガーネットとなりますが、ガーネットらしい色合いの印象を持ちながらも明瞭なスター効果が楽しめるのが特徴です。
こちらは少し透明度が低いものの鮮やかな色合いをしたスターガーネットのルースとなり、透明度が低い場合はスター効果は明瞭になります。
こうしてガーネットらしい赤色をしたものは、大きなサイズでも暗褐色系の色目をしたものよりも稀少性が高くなりますよ。
スター効果のような特殊な光彩効果が生じる石は個人的に好きなので、いろいろと取り揃えていますが、ガーネットの場合、透明度が高く鮮やかな色合いのものは何気に少なくて、以前よりも見掛ける事が多くなったのは、不透明で大きなサイズのタイプですね。
特にカット研磨されたルースの場合、透明度と色は需要なポイントだと実感しますよ。
アルマンディン・ガーネットの原石(飾り石・磨き石)
斜方十二面体結晶、偏菱二十四面体結晶といった産出形状をしたガーネットは結晶そのものに構造美を感じられる為、鉱物標本としても人気がありますが、その中でもアルマンディン・ガーネットは大きなサイズの結晶が産出する事から、そのままの状態や磨き上げた状態で観賞用の飾り石としても好まれていますよ。
こちらは握り拳くらいの大きさで結晶の形に合わせた木製台座が付いた完全な観賞用の飾り石ですが、石は自由に取り外せるので様々な角度から眺める事ができます。
石質として高品質の原石は主にカット研磨されてルースになる事から、そこまで品質の良いものではありませんが、こちらも20年以上も以前に買い付けてきたものなので、現在のものよりは高品質となっていて、鮮やかな色合いをしています。
ま、こういうのは趣味というか遊びみたいなものですけどね。
ガーネットの中では、もっともスタンダードなタイプとなるアルマンディン・ガーネットやパイロープ・ガーネットは基本的には安定した産出量となっているので、他のガーネット・グループのガーネットに比べると入手し易いですし、選択肢も多いと思いますよん。
赤黒さを感じる暗赤色が好きとか、鮮やかな赤色が好きとか、何となくガーネット、柘榴石ってイメージに合う色合いが好きとか、似た色合いの中での微妙な違いやカット研磨のスタイルやサイズ感とかもあると思いますが、そういう様々なリクエストに応えられる宝石なんて基本的には少ないので、そういう意味では宝石と天然石の中間的な位置付けの鉱物かもしれないですね。
ちゅ~ても、今後の記事で紹介する中で登場する一部の特殊なガーネットは、宝石の中でも究極の稀少タイプとなるものなんかもあり、あくまで気軽に扱えるガーネットはアルマンディン・ガーネットやパイロープ・ガーネットまでなんだよ。
ちゅ~感じで、次回もガーネットのシリーズが続きます。
ち~ゆ~。
ΦωΦ
ガーネットは複雑だから大変だなぁ。
ΘεΘ
ま、分かってて書き始めたので覚悟の上っす。
ΦωΦ
今回は、なかなか面白いまとめ方をしたんちゃう?
ΘεΘ
アルマンディンやパイロープで個別の記事は厳しいからねぇ。
ΦωΦ